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犬のしつけで叱ることはデメリットの方が多い
これまで犬のしつけ方については、「飼い主は、犬のリーダーにならなけばならない」「上下関係をはっきりさせることが大事」という考え方がありました。
これは犬の祖先であるオオカミが、リーダーを頂点とする階級社会をつくっていたことに基づいています。
しかしこのような考え方は、現在では見直されているのをご存じでしょうか?
なぜなら上下関係をつくるのは群れで暮らす犬の話で、飼い主さんと愛犬が目指すべき信頼関係とは違うからです。
犬は、家族の一人ひとりとそれぞれの関係性をつくっていると考えられています。
たとえば、「好きな人のいうことは聞くけど、苦手な人のいうことは聞かない」というもので、これは上下関係や順位づけとは違います。
そのため、犬を力づくで支配させるようなやり方では、犬の気持ちは離れるばかりでデメリットの方が多いのです。
特に従来の考え方に基づいたしつけ方の中には、すぐに止めた方がよいものもあります。
ここでは、やってはいけない犬の叱り方について解説していきます。
なぐる、蹴る、叩くなどの体罰
たとえ「しつけ」のつもりでも、「なぐる」「蹴る」「叩く」などの体罰は絶対にやってはいけません。
頭やお尻を軽く叩いたり、体をつねったりするのも体罰に含まれます。
しつけの効果が無いだけでなく、大切な信頼関係も壊れてしまいます。
マズルをつかんで叱る
マズルというのは、犬の鼻から口先の部分のことです
マズルはとても敏感な部分なので、本当に信頼している人にしか犬はさわらせません。
無理矢理つかんでも、「この人は嫌なことをする人だ」と思うだけで、いうことを聞くことはありません。
歯磨き訓練などでマズルに触らなければならない時は、ご褒美を与えながら徐々に慣れさせていく必要があります。
無理やり仰向けにして叱る
犬がお腹を見せる行為には、確かに「服従」の意味がありますが、それは自分から見せる場合に限られます。
叱るため、服従させるために無理矢理お腹を出させても意味はありません。
仰向けにしなくても、無理やり押さえつけて叱るのも同様です。
時間が経ってから叱る
犬が問題のある行動をした時、しばらく時間が経ってから叱ることはありませんか?
たとえば犬にお留守番をさせて外出した時です。
帰宅して部屋の中が荒らされていたら、思わず叱ってしまうかもしれませんね。
しかし部屋を荒らした直後でなければ、犬に叱る意味がありません。
時間が経ってからでは、何が原因で叱られたのかを理解できないからです。
犬の行動は、原因に対する結果で決まっていきます。
- 〇〇をしたら良いことがあった
- □□をしたら嫌なことがあった
という経験と学習の積み重ねが習慣になっていくのです。
そのため、時間が経ってから叱っても意味がないばかりか、身に覚えのないことで叱られていると受け取られてしまいます。
それよりも、「〇〇をやめたら褒めてもらえた」「いいことがあった」という経験を与えることで、行動を変えさせる(しつける)方が効果的です。
愛犬との信頼関係が壊れかけているサイン
上記のように叱り方をしたとき、以下のような反応が見られたら要注意です。
同じような叱り方を続けていけば、愛犬との信頼関係は確実に壊れてしまいます。
固まって動かなくなる
飼い主が呼びかけても反応をせず、固まって動かなくなる状態です。
この状態をみて、「犬との上下関係ができた」「服従させられた」と勘違いしてはいけません。
これは犬が恐怖を感じ、自分の身を守るための警戒や抵抗をしているのです。
しばらくすれば、元通りの関係に戻るかもしれませんが、上記のような叱り方を続けていると、犬は「何をしても叱られる」と思い、やがて無気力になっていきます。
逃げる
体の痛みやストレスに耐えられず、その場を逃げ去ります。
「もうこれ以上傷つきたくない」「相手も傷つけたくない」と思っているのです。
このような状況が繰り返されると常にビクビクした犬になり、飼い主や人を警戒して近づかなくなってしまいます。
うなり声をあげて攻撃する
犬は自分の身に危険が迫るとき、警戒してうなり声をあげます。
これは、「これ以上続けると攻撃するぞ」という意味です。
相手がそのサインを無視すれば、噛み付くという手段で攻撃するしかなくなります。
まとめ
オオカミのにならった「上下関係」や「服従」を意識した従来のしつけ方は、現在ではやめた方がいいしつけ方とされています。
家族の一員である愛犬を恐怖や力で支配することは決してよいことではありません。
特に今回紹介したような行為は、遊びのつもりでもしない方がいいです。
しつけは、愛犬と飼い主が安心で、快適な暮らしをするためにあることを忘れないようにしましょう。